
「車検」と「法定点検」は車を所有する人なら必ず通る道ですが、その違いについてしっかりと理解している方は多くないでしょう。
そこで今回は、混同してしまいがちなこれら2つの制度について詳しく解説します。
「車検」と「法定点検」には明確な違いがある
車を所有するすべてのドライバーは、法律により「車検」と「法定点検」を受けるよう義務付けられています。
どちらも車の安全性を保つうえで欠かせないものですが、これらはしばしば混同されてしまいがちです。
しかしながら両者には目的や点検項目、罰則の有無などといった明確な違いがあります。
両者の違いを正しく把握しておかなければ、意図せず法律違反となってしまうなど思わぬ落とし穴も。
この機会にしっかりと押さえておきましょう。
車検・法定点検の概要と目的
車検と法定点検の違いとして、まずは行われる目的が挙げられます。
どちらも車の安全性をチェックするという点は共通ですが、解釈に細かな違いがあります。
両者の概要をおさらいしながら、簡単にご説明していきましょう。
車検では保安基準との適合性をチェックする
車検とは正式名称「自動車検査登録制度」で、車の安全性や各種装置などが国の定めた保安基準に適合しているかどうか検査する制度。
別名「継続検査」とも呼ばれ「道路運送車両法第62条」により、全ドライバーの義務として定められています。
車検に通った場合、その車は公道を走るに足る安全性能を有していると認められ公道での走行許可が下ります。
逆にいうと公道を正しく走るためには、この車検に合格し続けなければなりません。
また、後述する法定点検とは違いあくまで車が基準値を満たしているかどうか検査するものであるため、のちの安全性を完全に保証するわけではありません。
車検に通ったからといって、必ずしも次回の車検まで安心とは限らないため過信は禁物です。
法定点検では車の正常性をチェックする
対する法定点検は「道路運送車両法第47条」および「48条」にて定められている点検義務です。
車検と同じく同法にて車を所有する全ドライバーに義務付けられており、またの名を「定期点検」ともいいます。
基準値との適合性をチェックする車検とは違い、法定点検では車が安全に走行できる状態かどうか確認しその維持が目的。
車の現状を細かく点検するため、消耗箇所やパーツの劣化状況など車検の検査項目にはない部分まで確認されるのです。
たとえばブレーキパッドが消耗したりパーツが劣化したりすると、車本来の性能は発揮できないため不具合を起こす原因に。
こうした異常を放置していると思わぬ事故や故障につながる恐れもあるため、それらを未然に防ぐために法定点検は行われます。
車検・法定点検の時期
車検と法定点検では行われる時期も異なります。
どちらの場合も車種によってさまざまなので、所有する車に応じたものを押さえておきましょう。
車検の場合
車検を受ける時期は一般的な自家用車(軽自動車・小型自動二輪車含む)の場合、まずは新車登録をしてから3年後に訪れます。
それ以降は、2年スパンで継続して受け続けなければなりません。
貨物自動車やレンタカー、バス、タクシーなどの場合は一般的な自家用車よりも短いスパンで車検が行われます。
というのもこれらの車は自然と走行距離や使用頻度が高くなるため、一般車よりもまめな検査や点検が求められるからです。
法定点検の場合
法定点検には「3ヶ月点検」「6ヶ月点検」「12ヶ月点検」「24ヶ月点検」の4種類があり、これら車種によって受けるべき点検が決められているのが特徴。
一般的な自家用車や自動二輪車の場合、12ヶ月と24ヶ月点検を受けます。
これらは「法定1年点検」「法定2年点検」とも呼ばれています。
「3ヶ月点検」と「6ヶ月点検」は、主にトラックやバス・タクシーなどの事業用車両が対象。
この点は車検と通じるところがあります。
車検・法定点検の点検項目
車検と法定点検では根本的な目的が異なるため、点検項目の内容もそれに準じています。
ここでは、それぞれの点検項目について解説しましょう。
車検の点検項目
車検では「安全面や環境面に問題はないか」という観点から検査を行います。
先述した通り国の保安基準へ適合しているかを測る検査であるため、基準に満たないと判断された場合は再整備や再検査に。
以下、点検項目の例をいくつか紹介します。
- 車検証の内容と車台番号が一致しているか
- タイヤにヒビや摩耗がないか
- ブレーキの効き具合に問題はないか
- シートベルトに不具合や破損はないか
- フロントガラスやサイドガラス、サイドミラーに割れやヒビがないか
- シートベルト警告灯やエアバック警告灯などの各種メーターに異常がないか
- ハンドル操作にズレや違和感がないか
- クラクションの音量やヘッドライトの光量、排気ガス濃度などに問題はないか
なおカスタム車で車検を受ける場合、保安基準に不適合な改造が認められると不正改造と見なされる恐れがあります。
とくにダッシュボードやヘッドライトなどは念入りにチェックされるため、注意が必要です。
法定点検の点検項目
「法定点検には4つの種類がある」ということは、先にもお伝えしましたが、この種類によって点検項目の数は変わってきます。
たとえば一般的な自家用車なら12ヶ月点検および24ヶ月点検で、点検項目はそれぞれ26項目と56項目あります。
また、点検の種類が同じでも車種によって項目数が異なることもあるため、どのような点をチェックされるかはケースバイケース。
ここではまず、一般的な自家用車を想定した12ヶ月点検における点検項目の例を、いくつかご紹介しましょう。
- パワーステアリング装置のベルトに緩みや損傷がないか
- ホースおよびパイプに漏れや損傷はないか、取り付け状態は良好か
- ホイールシリンダーやディスクキャリパーなどに液漏れがないか
- ブレーキディスクとパッドの間隔は適切か、パッドが摩耗していないか
- ホイールナットなどに緩みはないか、タイヤの状態は良好か
- クラッチが切れたときの床板とペダルの間隔は適切か
- エンジンやバッテリーの状態は良好か
- オイル漏れや冷却水の漏れが生じていないか
続いて、24ヶ月点検における点検項目の例をいくつか見ていきましょう。
24ヶ月点検では12ヶ月点検でチェックした項目に加え、さらに以下のような項目が追加されます。
- ハンドルの操作具合
- ロッドやアーム類に緩みや損傷などがないか
- パワーステアリング装置のオイル漏れがないか、オイル量は適切か
- ホイールシリンダーやディスクキャリパーなどに摩耗や損傷がないか
- ブレーキディスクやパッドに摩耗や損傷がないか
- サスペンションの取り付け部および連結部に緩みがないか
- ショックアブソーバーにオイル漏れや損傷がないか
- 燃料装置に燃料漏れが生じていないか
これらのほかにもさまざまな箇所を細かくチェックされます。
今回ご紹介した例はあくまで一部に過ぎないため、より詳しく知りたい方はインターネットで検索をかけてみましょう。
車検や法定点検を怠った場合の罰則
法律によって義務付けられている車検と法定点検ですが、もしこれらを怠った場合はなんらかの罰則はあるのでしょうか。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
無車検車には罰則のリスクがある
しばしば誤解されがちですが、車検を受けないこと自体にはなんら罰則規定などはありません。
ただし車検切れの車(無車検車)で公道を走行した場合には「道路運送車両法第108条」の規定に違反するため、罰則対象となるので注意してください。
この場合まず違反点数が6点加算され、一発で免許停止処分となってしまうのです。
そのうえ6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されます。
その際同時に自賠責保険も切れていた場合は、自動車損害賠償保障法違反によりさらに重い処分がくだされることに。
車検と自賠責保険の期限がリンクするよう設定していると「車検切れ時には自賠責保険もセットで切れる」といったケースが発生します。
こうなると万一の際にリスクも非常に大きくなるため、それぞれの期限を重ならないように設定することが一般的です。
法定点検では基本的に罰則がない
法定点検の場合は、受けなくとも罰則はとくにありません。
仮に12ヶ月点検を受けなかったとしても、24ヶ月点検の時期には車検を受けることが必要です。
よってどのみち点検を受けることになるため、特段罰則を設けていないと考えられます。
ただし、これはあくまで一般的な自家用車での話。
事業用車両となると話は別で、法定点検を怠った場合は「道路運送車両法第110条」の規定により30万円以下の罰金刑に処せられます。
またメーカー側からすれば、法定点検が正しく行われることを前提としてメーカー保証を付けています。
もしも法定点検を怠った場合、メーカー保証を断られるなどのトラブルにも発展しかねないため、そうしたリスクを避ける意味でも疎かにはできません。
車検や法定点検はどこに依頼すればよいのか
車検や法定点検は「カーディーラー」「カー用品店」「整備工場」「ガソリンスタンド」など、さまざまな業者に依頼できます。
ただしそれぞれ点検費用や整備の質、作業にかかる時間などが変わってくるので自分に合った業者選びが重要。
実績と信頼で選ぶなら、車を購入したカーディーラーにそのまま依頼すると安心でしょう。
メーカー車の知識が豊富で技術力も高いです。
その反面費用が割高な点と、すみずみまで調べるため作業に時間がかかりやすい点はデメリットといえます。
費用を抑えたい方は、カー用品店やガソリンスタンドもおすすめです。
給油やパーツ交換のついでに依頼できるため、気軽に相談しやすいでしょう。
ただ店舗によっては「整備工場を持っていない」「整備士の技術力に差がある」など不安要素もあります。
業者選びにはユーザーの口コミやレビュー、事前の見積もりなどをよく比較して慎重に検討することをおすすめします。
まとめ
車検と法定点検、どちらの制度も法律で定められたドライバーの義務ですがそれぞれ明確な違いがあります。
車検は人間でいうところの健康診断、法定点検は治療のようなものと考えるとわかりやすいかもしれません。
つまり、どちらも車の安全性を維持するために欠かせない制度ということです。
安全で快適なカーライフを送れるよう、車検と法定点検は両方セットで受けるようにしてください。

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