
車のクラッチに不具合があるまま乗り続けると、さまざまなトラブルに見舞われるリスクがあります。
この記事では不具合のチェック方法や交換のタイミング、また交換にかかる費用などについて説明していきます。
車のクラッチの役割
免許を取得してから、AT車ばかりを乗り継いできた方にとっては、「クラッチ」はそのペダルがないのでなじみがないかもしれません。
クラッチとは、エンジンの動力とギアをつないだり離したりするための機構です。
ATを含むほとんどの車にこの機構が搭載されています。
クラッチは、「クラッチ板」と「フライホイール」、「カバー」の3つの要素で構成されています。
これらは、エンジンのクランクシャフト部に設置されていて、外からはまず見えません。
そもそも、どうして車にはクラッチのようなシステムが必要なのでしょうか。
それは、エンジンの動力が常にギアへ伝わってしまうとスピード過剰になり、大変危険なためです。
クラッチ板とフライホイールがつながっているときにエンジンの動力がギアへ伝わります。
クラッチペダルを踏みこむとクラッチ板とフライホイールが離れ、ペダルから足を離すと、これらがつながり動力が伝わる仕組みです。
AT車でもMT車でも、スピードをコントロールするために変速を繰り返します。
しかし、変速の際にクラッチで動力を遮断しないと、歯車にダメージが加わり、スムーズに変速できません。
AT車では、クラッチの操作自体をコンピュータ制御で行っています。
クラッチは、なめらかに加速・減速するために搭載されている、とても重要な機構なのです。
クラッチの不具合のチェックポイント
ブレーキパッドやエンジンオイルなら、減りや汚れ具合で状態を確認できますが、クラッチではそれができません。
そのため、クラッチの状態は“フィーリング”でチェックする必要があります。
走行中にエンジンの回転数が突然上がる
「一定のスピードで運転しているとき、何の操作もしていないのに、突然エンジンの回転数が上がる」
もし、このような症状がひんぱんに出るようなら、クラッチの滑りを疑いましょう。
クラッチ板と、フライホイールが圧着することで、エンジンの動力がギアやドライブシャフト、タイヤなどへ伝わります。
なんらかの不具合が起こり、クラッチ板の摩擦力が弱まるとクラッチは滑りはじめ、空回りするようにエンジンの回転数だけが上がっていきます。
このような症状は、多くの場合、クラッチの滑りが原因です。
クラッチが切れない
ペダルを踏みこめば、クラッチ板とフライホイールが離れるので、駆動系への動力がシャットアウトされます。
しかし、クラッチに不具合が発生していると、ペダルを踏みこんでもクラッチが切れません。
ペダルを踏みこんだとき、感触が軽い、ギアが入りにくいといった症状がある場合、そのひとつとしてクラッチワイヤーの不具合が挙げられます。
ワイヤーが伸びる、切れる、動きが鈍くなると、普段どおりのクラッチ操作ができません。
クラッチワイヤーの不具合だけなら、多くの場合、ワイヤーのみの交換で直ります。
ただ、ワイヤーではなく、本体に不具合が生じてクラッチが切れにくくなることもあり、この場合は大掛かりな修理が必要です。
不具合の原因
クラッチ板の摩耗は少しずつ進むため、多くの人は気が付くことができません。
ある日突然、症状が出たように感じるクラッチの不具合は、どんな原因で起こるのでしょうか。
半クラッチの多用
MT車では、ローギアからスタートする際に半クラッチを使います。
半クラッチは、スムーズに車を発進させるためのテクニックです。
回転力をゆっくりと車輪側につなげるためにこの操作を行います。
しかし、半クラッチを多用したり、半クラッチの状態を続けたりすると、クラッチに過度の負荷がかかり、クラッチ板が摩耗することがあります。
操作自体に問題があるわけではありませんが、多用はよくありません。
半クラッチは、ブレーキを踏みながらアクセルも踏んで進んでいるようなものです。
これでは、ブレーキパッドにかかる負担が大きくなり、摩擦力を生み出すパッドがどんどん削れてしまい、本来の制動力が損なわれます。
半クラッチの多用は、これと同じようなものです。
乱暴なクラッチ操作
クラッチを切るときは、スピーディにペダルを踏みこみます。
ゆっくりペダルを踏んでしまうと、半クラッチのような状態になり、機構全体に負担をかけてしまうからです。
反対に、クラッチをつなぐときはゆっくりつなぎます。
乱暴につなぐと、やはり機構に負担をかけてしまうため注意が必要です。
レースのようにエンジンの回転数を目いっぱい上げてクラッチをつなぐような運転はやめましょう。
強い動力が一度にドカンと伝わってしまい、クラッチだけではなく、駆動系のさまざまなパーツや機構にダメージを与える可能性があります。
不具合を放置するリスク
クラッチに不具合が生じているのにそのまま放置すると、さまざまなリスクが発生します。
場合によっては、走行中の事故につながる恐れもあるため、注意が必要です。
以下に考えられるリスクをまとめてみました。
1.不動車になる
クラッチが滑っている状態なのに、放置して運転を続けていると、最終的には焼きつく恐れがあります。
こうなると、完全にエンジンからの力が伝えられなくなるため、車は正常に動作しません。
つまり、不動車となってしまうのです。
走行ができなくなるため、自走して修理工場へ持ち込むこともできません。
こうなると、「その場ですぐ」とはいかないため、カーレスキューや整備工場に連絡し、引き取りに来てもらう必要があります。
カーレスキューにせよ、整備工場へ連絡するにせよ、レッカー代やキャリア代が発生します。
近場なら大した金額ではないかもしれませんが、遠方だとかなりの額になる場合もありますので、愛車を不動にすることだけは避けたいところです。
2.事故を起こす危険性が増す
クラッチの調子がおかしくなると、エンジンや車の挙動自体がおかしくなることがあります。
すでにご紹介したような、クラッチの滑りによる回転数の上昇や、クラッチワイヤーに異常があると、ドライバー自身があわててしまい、車をうまくコントロールできなくなります。
信号待ちで並んでいる際も、発進に手間取ると、後続車に追突されるリスクが高まるため、やはりクラッチのような重要な機構は、確実に整備しなければなりません。
車を正しく整備することはドライバーの義務です。
3.修理費用が高くなる
クラッチの滑りが気になり始めた段階で修理に出せば、クラッチ板の交換だけで済むケースがほとんどです。
しかし、クラッチが滑っているのにそのまま乗り続けると、ギアにまで影響が及ぶ可能性があります。
このようにクラッチの不調は、ほかの機構にも悪影響を及ぼします。
結果的にクラッチだけでなく、ギアまで交換するとなると、相当な出費を覚悟しなければなりません。
早期の交換がおすすめ
ここまで説明してきたように、クラッチに不具合が生じているのに、そのまま乗り続けてしまうのは、故障へとつながるリスクが高すぎます。
そのため、不具合に気づいた時点で、車を修理工場に持ち込むことをおすすめします。
「半クラッチも必要最低限で、乱暴な操作もしていない」といった安全運転派のドライバーの車でも、この大切な機構に不具合が生じることはあります。
そもそも、クラッチはブレーキパッドと同じく消耗品なので、クラッチの状態については、定期点検の際にかならず、整備工場のスタッフに確認するといいでしょう。
交換にかかる費用
クラッチ交換にかかる費用は、車種や交換を依頼する整備工場により異なります。
国産の乗用車なら、パーツと工賃を含め、5~20万円くらいが相場です。
車種によってはエンジンを降ろさなければならないので、その場合はさらに高くなります。
純粋にクラッチだけの交換だけで済めばいいのですが、ギアやドライブシャフトなどが破損していると、さらに費用はかさみます。
このようなことにならないためにも、早期の修理をおすすめします。
セルフはおすすめしない
日ごろから自分で車をメンテナンスしている方や、チューニング、ドレスアップが好きな方なら、自分で交換できるかもしれません。
ただ、クラッチ交換は、ブレーキパッドやタイヤ交換などとは比べものにならないくらい難易度が高いです。
エンジンを降ろさなければならない車種では、リフトや専用のツールが必要なので、素人では難しいでしょう。
設備の整った工場で、プロに作業してもらったほうが確実です。
エンジンを降ろさなくても済むケースでも、知識と設備がないと、クラッチの交換はできません。
自身がプロでない限りは、整備工場に作業を依頼しましょう。
まずは業者で見積もりを
クラッチ交換は、どうしても費用が高くなる傾向があるため、不具合に気がついていてもそのまま乗っているという方もいるかもしれません。
しかし、クラッチは車の機構の中でもとても重要なものです。
修理業者を選ぶ際は、見積もりを依頼し、比較することから始めましょう。
最近はインターネット上でも、お住まいのエリアの修理業者を比較できるサイトがあるので、こうしたサイトを利用するといいでしょう。
なお、クラッチを交換する際は、新品に交換しましょう。
中古のクラッチも販売されていますが、旧車や特殊な車種など、新品が存在しない、または手に入れにくいという場合を除いては、整備工場で新品に交換してもらいましょう。
まとめ
車のクラッチに不具合があるまま運転を続けてしまうと、クラッチ以外の部分にまでダメージが及び、修理代も高額になります。
フィーリングで症状をチェックし、不具合があると感じたら、早めに交換しましょう。
クラッチ交換は素人がかんたんにできるような作業ではありません。
比較サイトで複数の工場から見積もりをとり、信頼できる業者を見つけてから修理を依頼しましょう。

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