
世界的な時計メーカーである「SEIKO(セイコー)」が開発した「スプリングドライブ」。独自のメカニズムを持ち、高い性能と耐久性を備えています。
しかし、そんなスプリングドライブでも定期的なオーバーホールは必要不可欠です。
この記事では、スプリングドライブのオーバーホール費用や頻度について紹介します。ぜひ参考にしてください。
この記事で分かること
スプリングドライブとは?
世界的な時計メーカーであるSEIKO(セイコー)が開発したスプリングドライブ。
スプリングドライブは、セイコーの高級ブランドであるグランドセイコーやガランテに搭載されている機構です。
その精度の高さや滑らかな運針から、国内のみならず海外からの評価も高く、高品質なモデルが揃うグランドセイコーの中でも高い人気を誇ります。
とはいえ、スプリングドライブについて詳しく知らない方もいるでしょうから、まずはその特長やメカニズムから見ていきましょう。
機械式時計とクオーツ式時計のいいとこどり
ほとんどの腕時計は機械式とクオーツ式の2種類に分かれます。
機械式はぜんまい式ともいわれ、手巻きのぜんまいから動力を得て針を動かし、振り子の原理で針が進むペースを制御します。
クオーツ式は、電池の電気で針の回転や盤面の表示を行い、水晶の発振で針が進むペースを制御します。
スプリングドライブは、機械式の良さと、クオーツ式の良さを兼ね備えた内部構造になっています。
しかし外観は機械式の時計と大差なく、実際針を動かす構造についても機械式と変わりません。
ユニークなのは、針を一定の速度で動かすための制御部分です。機械式の時計ではテンプ・アンクルと呼ばれるパーツを使うのに対し、スプリングドライブではICチップや水晶振動子を用います。
これは一般のクオーツ式時計と同じ仕組みです。
つまりクオーツ式と同じ精度を持った機械式の時計というわけです。
そのため、時計の正確さを示す平均月差は±15秒程度に収まり、さらに部品の電子化により衝撃にも強いとされています。
このように、仕組みを説明するとシンプルに見えます。
ところが実際には、異なるタイプの時計の良いとこ取りは技術的に難しく、他のメーカーでは真似の出来ないモデルになっているのです。
クオーツ式の腕時計を長持ちさせる方法は以下をご参照ください。
スプリングドライブは電池を使わない
スプリングドライブは機械式時計と同様、電池がないのが特長です。ではICチップや水晶振動子に必要な電力は、どのように供給されているのでしょうか。
上記でも説明した通り、針はぜんまいの力によって動きます。制御部分に必要な電力も、そこから生まれているのです。
ぜんまいによるローターの回転運動と、時計内部のコイルにより、わずかな電力が発生します。
その電気で水晶振動子を振動させ、ICがパルスを読み取ることで時間を計算。ローターの速度を調整して、針を正確に運行させている、という仕組みです。
さらにローターに掛ける電磁ブレーキを利用して、更に新しい電力を得るという仕掛けもされています。
「グランドセイコー」の歴史や逸話
セイコーが、スプリングドライブの開発を始めたのは、1982年。それから10数年もの開発期間を経て、実際にその機構を搭載した時計が発売されたのは、1999年のことでした。
スプリングドライブを搭載した「グランドセイコー」のエピソードとしては、ジュネーブで行われたコンクールの話が有名です。
このコンクールは各国の時計の精度を競うものでしたが、セイコーが地元スイスの時計をおさえて、上位に並んでしまいました。
そのためコンテストの結果は企業だけに公開され、翌年からこのコンテストは開催されなくなってしまったと言います。
今では世界の高級時計市場に向けて販売される、重要な商品になっているグランドセイコー。こうしたエピソードからも、その精度の高さがうかがえます。
スプリングドライブの寿命
機械式時計は、保存環境などに気を配り大事に使えば、物理的に部品が破損しない限り非常に長い間使えます。
しかしクオーツ式時計は、部品として使っている電子回路が経年により劣化するため、その多くは10年ほどの寿命しかないとされています。
では、両者のハイブリッドであるスプリングドライブの寿命は、どれくらいあるのでしょうか。
寿命はないに等しい
スプリングドライブはICチップや水晶振動子を使いますが、クオーツ式時計に使われているような電子回路は内蔵されていません。
そのため電子回路の劣化による故障をあまり心配しなくて良いのが特長です。
時計としての耐久性は機械式と同等です。取り扱いに気をつければ、相当長い時間が経っても故障することなく快適に使える可能性が高いでしょう。
強いて言えば、ICチップに関する不具合が出ることですが、これも部品交換を行えば再び使えるようになるので大きな問題にはなりません。
オーバーホールは必要
クオーツ式時計に比べ、非常に長い寿命を持つスプリングドライブですが、何もしないで放置しておいても問題ないというわけではありません。
機械式時計と同等の耐久性があるとは言っても、その機械式時計も時には故障します。
言い換えると、機械式時計と同じようなお手入れは必要と言えるでしょう。
スプリングドライブの寿命を延ばし、故障から遠ざけるためには、普段から丁寧に扱い定期的なメンテナンスや「オーバーホール」が必要です。
故障した時に修理に出すのは当たり前ですが、故障する前にこそ、時計のコンデイションを整えておかねばなりません。
ただし、スプリングドライブは構造が特殊で、作っているメーカーもセイコー一社です。取り扱いには、他の時計とは異なる部分があります。
その点について、次のパートで詳しくご紹介します。
ほかにもオーバーホールは本当に不要か解説している記事があるので、気になる方はこちらもご覧ください。
スプリングドライブの寿命を延ばすオーバーホールとは
スプリングドライブの寿命を長くするか短くしてしまうか、その違いに大きな影響を与えるのが「オーバーホール」です。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、腕時計のように日常的に使い続ける精密機器を所持するのなら、欠かせない習慣です。
オーバーホールはなぜ必要なのか?
スプリングドライブはデジタル表示ではなく、実際に針を動かして時刻を示す仕組みです。
そのため、使っているうちにどうしても油の劣化や消耗が進んでしまいます。
油の寿命は、おおむね3年ほどとされています。油の劣化や消耗が進んだ時計をそのまま使い続けることは、部品がすり減る原因のひとつです。
そうならないようにするための対処がオーバーホールです。
オーバーホールとは故障の有無に関わらず、定期的に「分解」や「掃除」「機能のチェック」などを行う点検作業。オーバーホールを行うことで時計の品質が保たれ、正常に時間を刻み続けてくれます。
部品の清掃や状態確認により、故障を未然に防ぐこともできるでしょう。
スプリングドライブに限らず、機械式時計を使う方にとっても、不可欠なメンテナンスです。
オーバーホールを行う場所や頻度
オーバーホールは、定期的に行うことも大切です。
スプリングドライブのオーバーホールは、機械式時計と同じく3~5年に1回を目安に行うのがおすすめです。
ただし注意が必要なのは、スプリングドライブはセイコー独自の機構であるため、一般の時計店ではオーバーホールが困難である、ということ。
スプリングドライブには「3針モデルでは200点以上」「クロノグラフでは400点以上」という、非常に多くの部品が使われています。
油を注入する場所も、自動巻でおよそ80ヶ所、クロノグラフで約140ヶ所という複雑さです。
そのためスプリングドライブのオーバーホールは、セイコーの公式サポートであるコンプリートサービスに任せるのがおすすめです。
セイコー公式サイトの申込みフォームから依頼すると、概算の見積りと発送キットが送られてきます。
また、WEBサイトから申し込む以外にも、一般の時計店から取次いでもらうことも可能です。
セイコーのコンプリートサービスの内容
コンプリートサービスで行われるオーバーホールは、多岐にわたります。まず基本となるのは、時計の部品の分解と洗浄です。
次いでテンプやぜんまいの精度の調整、部品の組み立て、そしてそれに合わせた各所への注油やタイミング調整を行います。
さらにコンプリートサービスの特長となるのが「ライトポリッシュ」です。ライトポリッシュはセイコー独自のサービスで、メタルブレスやケースの表面をきれいにしてツヤ出しをする加工です。
そして最後に、筋目つけなどの表面加工や、パッキンの交換、防水や時計の精度の検査などを行います。
まさにスプリングドライブの寿命を、トータルに長持ちさせてくれるサービスと言えるでしょう。
修理が終わると、時計とともに修理完了報告書が送付され、1年間の保証も付いてくるので安心です。
グランドセイコーのオーバーホールにかかる費用については、下記の記事で詳しくまとめているのでご覧ください。
オーバーホールの料金や期間など
スプリングドライブのオーバーホールにかかる料金は、以下の通りです。
ブランド・コレクション | 費用目安 |
---|---|
グランドセイコー スプリングドライブ | 74,800円~ |
クレドール スプリングドライブ | 63,800円~ |
ガランテ スプリングドライブ | 63,800円~ |
これらは基本料金です。もしオーバーホールで何か異常が見つかり、パーツ交換などが必要になった場合は、追加料金が発生します。
その場合、修理を実施する前に、作業を行うかどうかの確認のメールが届きます。
時計を送ってから戻ってくるまでの期間は、おおむね2~4週間程度です。
大事な時計と長い間離れてしまうので、オーバーホールは計画的に行いましょう。
下記の記事ではオーバーホールの費用についてまとめているので、こちらも参考にしてください。
スプリングドライブの寿命が来た?と思ったときの対処法
大事に手入れをしていても「ある日突然、スプリングドライブの時計が動かなくなってしまう」などのトラブルに見舞われる可能性はあります。寿命が来たと諦める前に、迅速に修理に出しましょう。
スプリングドライブの保証期間は、時計を買ってから3年間です。
その期間内であれば、基本的に無料で修理をお願いできます。
買ってから3年以上経っている場合や、保証期間内でも使用状況に問題がある場合の修理は、有料です。
修理に際しては、その時計のモデルに使われている部品があるかどうかが、重要です。生産中止になっていないか、在庫はあるか、事前に確認するのが確実です。
下記の記事では、全国対応可能なおすすめの腕時計修理業者をまとめているので参考にしてください。
スプリングドライブの寿命を延ばすには?まとめ
スプリングドライブには、クオーツ式時計に用いられている電子回路がありません。
そのためスプリングドライブは、一般の機械式時計と同等の寿命を持っています。長い期間を通して、快適に使えるでしょう。
より寿命を伸ばすためには、部品の劣化や油切れを防ぐことが大切です。3~5年に1回程度は、セイコーのコンプリートサービスにオーバーホールに出しましょう。
もし故障が疑われる場合も諦めず、まずは修理を依頼してみてください。

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